認知症が進行しているような場合に先に委任状を取ることがある
事業承継の場面だと、株式をもっている人の認知症が進行しているような状況がよくあります。
その際、弁護士が、その人から株式譲渡の委任状を取得することがあります。
さて、その委任状の効果は、いつまで続くのでしょうか。
原則として委任状の有効期限は決まっていない
実は、委任状の有効期限は決まっていないのが通常です。
そのため、一回取得してしまうと、ある意味、委任状を取り返さない限り永遠に代理権がある状況になりうるのです。
(だからこそ、専門家である弁護士に委任するのが安全とはいえるのですが・・・)
3ヶ月しか有効期限がないという噂?
実は、委任状の有効期限が3ヶ月だという話もよく聞きます。
ただ、これは運用にすぎません。代理権自体は3ヶ月で消えるわけではありません。
しかしながら、取引の相手方は、取引を拒んでもよいという大原則(これを「契約自由の原則」といいます)との関係で、契約が成立しないことがあり得るのです。
説明・交渉によって取引が成立することも、よくあるのです。
委任の範囲が広いと無効になることが?
ただ、「白紙委任」といいまして、委任の範囲が不明瞭な代理については、その効果が限定されることがあります。
そのため、リスクを回避する観点から、委任の対象事項はきちんと限定しておくことが望ましいでしょう。
代理権が消えるのはいつ?
そして、その株式の所有者の認知症が進んでしまったような場合、代理権は消えるのでしょうか。
答えは、消えません。
逆に、代理人が後見開始の審判を受けたりすると、代理権は消えます。
また、どちらかが死亡したりしても終了します。
あと、代理人が破産しても代理権は消えます。
まとめ
以上より、株式の所有者の認知症が進行しているような場合で、かつ買い主が決まりきっていないような事案では、あらかじめ委任状を取得し株式譲渡の代理権を得ておくというのは、それなりに有効な方法です。
弁護士 杉浦智彦