裁判例がある問題ではありませんが、事業承継の「基本合意書」はどの段階で締結するか、それなりに曖昧なので問題となることがあります。
そのものの裁判例はないのですが、過去、アドバイザリー契約の基本合意成立の報酬請求について争った裁判例に、「基本合意」の定義が記載されていますので、これが一つの参考となります。
東京高判H25.3.27
「本件アドバイザリー契約にいう「基本合意」については、その契約中に定義を明らかにする条項を欠き、文言上その意味内容が一義的に定まるものとも認められないところ、本件アドバイザリー契約によれば、上記「基本合意」が成立した場合、被控訴人は控訴人に対し基本合意締結手数料として一〇〇万円を支払うべき旨が約定されていることからすれば、上記「基本合意」は、単に事業承継について交渉を行うとの内容の合意に止まるものと解することができない。そして、本件基本合意の締結により基本合意締結手数料が支払われており、本件基本合意は上記「基本合意」に当たるものであることからすれば、本件アドバイザリー契約における「基本合意」とは、少なくとも、本件基本合意において定められた 事項を含むもの、すなわち、本件事業承継の枠組み、譲渡金額の基準、基本合意の有効期間、その有効期間中は相手方と専属的に交渉を行い、競合する他社と交渉しないことなどを内容とする合意と解するのが合理的」としています(下線は筆者)
事業承継の枠・譲渡金額の基準、独占交渉の有効期間などが定められて、はじめて「基本合意」というというような内容ですね。
逆をいえば、このようなものが具体化した段階で、基本合意書を締結するのが合理的だといえるでしょう。