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取締役全員が特別利害関係人となってしまう場合の取締役会の承認のとり方

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「特別利害関係を有する取締役」は取締役会で意見を述べられないし議決に加われない

譲渡制限株式の譲渡承認を受ける取締役、利益相反取引・競業取引の承認を受ける取締役、責任の一部免除をもらう取締役、解任される議事に上がった取締役などは、会社のためでなく保身のために議決権行使をするため、取締役会で意見を述べたり、議決に加わったりできません。

さて、そうはいっても、たとえば取締役全員でMBOをする場合など、取締役が全員特別利害関係人になるような場合、その承認を取るための取締役会が実質的に開催できないということがありえます。

 

この場合、どうするのがよいでしょうか。

公式ルートは「職務代行者」選任?

この場合の一つの公式ルートが、「職務代行者」の選任(会社法346条2項)です。

裁判所に、取締役の職務代行者を選んでもらい、その人に取締役会を開いてもらうのです。

なお、定足数(取締役会開催のための最低人数)については、通達があり、

「取締役3名の株式会社の取締役会で、2名の取締役が特別利害関係を有する事項を決議する場合、取締役全員が出席した上で、利害関係を有しない取締役1名がなした決議は有効である」(法務省昭和60,3,15民4第1603号民事局第4課長回答)

こんな感じで、出席だけしてもらうことで、有効な取締役会決議ができるのです。

 

現実的なルートは、新たな取締役選任

ただ、職務代行者選任なんていう、とても面倒で時間のかかる作業をすることは困難なことが多いでしょう。

通常は、新たな取締役を選任し、その人にやってもらうということが多いようです。

 

ほかにも、株式の譲渡の場合は、みなし承認制度をつかったり、他の制度の活用もあり得るところではあります。

 

<追記>2018/11/16

もっとも、特別利害関係人である取締役を決議から除外する趣旨は、その者を排除して他の取締役に決めさせることにより決議の公正を確保することにあることから、全員が決議について共通の利害関係を有している場合にまで、特別利害関係取締役を除外する369条2項の規定が適用されるものではないとする有力な見解を見つけました。(しかも、田中亘先生のご見解とのことで、それなりに有力そうです。)

弁護士 杉浦智彦