遺言するにも「能力」がいる
遺言をつくる「能力」といわれると、「私、遺言なんて大それたものを作るなんてできるかしら?」みたいな話が出てくるでしょうが、そういう話ではありません。
法律用語として「遺言能力」というものがあるのです。
これは、抽象的には「遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る意思能力」と定義されていますが、実際のところ、具体的にどのような要件が揃っていればいいのかについては明らかでありません。詳しくは、以前書いた記事をご覧ください。
死にかけている人のために用意されている「死亡危急時遺言」制度
実は、死にかけていて、遺言を書ける状況にない人も、遺言を作成することができます。その制度が、死亡危急時遺言と呼ばれるものです。
要件は、次の7つです。
・疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者であること(要するに死にかけていること)
・証人3名以上が立ち会うこと
・遺言者が、遺言の内容を証人に口授すること
・口授を受けた証人が口授内容を筆記すること
・読み聞かせ、または閲覧させ、正確であることを各証人が承認すること
・証人が署名押印すること
・遺言の日から20日以内に家庭裁判所に確認してもらうこと
ただ、ガッチガチに揉める
ただ、過去の裁判例を見る限り、死亡危急時遺言は無茶苦茶揉めます。
弁護士が証人になって口授を受けて作成したような場合でも、裁判になって、解決まで10年くらいかかっているようなものもあります。
おすすめとしては、元気なうちに遺言を作成することと言わざるをえないですね。
弁護士 杉浦智彦