事業承継を多く取り扱っていると、「先生は信託とか勧めないんですか」と言われることがあります。
当然、信託を使うべき場面はあり、そのときは信託を進めるのですが、
「贈与の代わりに信託」「遺言の代わりに信託」みたいなものは、なかなか勧められないように思います。
それは、信託は、コストがある程度かかりながら、「リスク」もあるからです。
そうはいっても、信託が増える理由がなぜなのかを考えていると、面白いことを伺いました。
「中小企業の社長は、公証人とか裁判所とか、堅苦しいのが嫌だ」という話です。
これは「なるほど!」と思いました。
たしかに、信託であれば、(公正証書で作成する信託は別ですが)単に書面を作成すればよいだけです。
そういう点で、(リスクを度外視しているとは思いますが)カジュアルな形で、自分の財産の整理ができるわけです。
弁護士の立場で言うと、リスクをどうしても意識してもらわなければならないですが、
同時にシンプルで、当初の金額が安いというものに惹かれているという実情も感じています。
弁護士として、いかにわかりやすく、円滑な承継を実現するためのツールを提供できるかを考え続けなければならないのかもしれません。
弁護士 杉浦智彦