【とても細かい論点にふれることを、はじめにお断りしておきます】
中小企業でも使われている「書面決議」
取締役や株主が議題・議案を提案し、株主全員が書面か「電磁的記録により」同意したときは、可決する内容の株主総会決議があったものとみなされます。
この「電磁的記録」とはナンジャラホイというのが、今回の話です。
「電磁的記録」は定義がある
どうでもいいことですが、会社法は2条で細かいことの定義がなされているのですが、この「電磁的記録」については、会社法26条という、変な場所に定義がされています。
26条全体を見てみましょう
(定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
ここで書かれている
「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるもの」が定義です。
わかりますでしょうか。また、法務省令任せです・・・
会社法施行規則224条が、この「法務省令」になるのですが、ここでは、以下のとおり定義されています。
(電磁的記録)
第二百二十四条 法第二十六条第二項に規定する法務省令で定めるものは、磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。
何言ってるかというと、「ハードディスクや、ちゃんとしたクラウドに保存されているものが電磁的記録だ」ということですね。
カンのいい人だと気づくとは思うのですが、「保存方法はわかるが、どうやって同意したらいいのか聞いているんだ」と思わないでしょうか。
そもそも、メールは、「電磁的記録」というより、「電磁的方法」のように思えます。
ただですね、そもそも、それは「書面・・・によって」という部分も同じです。書面をどう送るのかについては、全く触れていないわけです。
この趣旨自体、「きちんと後で検証できるようにしておけば大丈夫だよ」ということだから、保存方法にしか触れていないのです。
結論としては、E-mailは、ハードディスクかクラウドに文書ファイルとして保存されているので、「電磁的記録によって」に該当すると判断されることになります。
弁護士 杉浦智彦