弁護士も全ての契約書をイチから作成しているわけではない
弁護士も、全ての契約書をイチから作成しているわけではありません。
これまでの先人の知恵(≒ひな形など)を活用し、お客様の要望する形をつくっていくのが通常です。
(なんのガイドもなく作成することも、中にはあります。それは、何かしら新規性があったり、特殊性があることが多いですね。)
M&Aのときの株式譲渡契約書については、日本においては、比較的「型」が決まってきました。
弁護士も活用する株式譲渡契約書のひな形が掲載されている書籍は?
従来から、株式譲渡契約書のひな形のパイオニア的な立ち位置にあったのが、
藤原総一郎先生(長島・大野・常松法律事務所所属)編『M&Aの契約実務』です。
この本は、M&Aの法務担当者のバイブルとして、発売当初から活用され続けていました。
ただ、この本には、契約書全体のひな形があるわけではなく、条項のサンプルがあるので、「まったく株式譲渡契約に手を出したことがない」という人にとっては、なかなか使いにくいかもしれません。
「株式譲渡契約書の全体のひな形はないか」というところで、最近2つの書籍が発売されました。
まず、戸嶋浩二先生(森・濱田松本法律事務所所属)ほか『M&A契約』には、売主側・買主側のひな形が用意されています。
次に、藤田友敬先生(東京大学教授)編『M&A契約研究』にも、モデル株式譲渡契約書が用意されています。
どちらも良いですが、売主側・買主側ということで用意されているということ、細かい条項の配慮があるということを考えると、紫色の『M&A契約』のほうが、使いやすいひな形だといえます。
これらの書籍の最大の悩みどころは、小規模中小企業M&Aにそぐわない部分があるということ
ただ、これらのひな形は、長文ですし、なおかつ、大きな企業を中心に考えて作られたものになります。
組織化されていない中小企業だと、どうしても、経営者の役員継続やサポートなどの条項も必要になります。
そういう場合に活用したほうがよいひな形としては、『事業承継法務のすべて』に掲載された株式譲渡契約書のひな形があります。
中小企業のM&Aであれば、これを活用するのがよいのではないかと思います。
弁護士 杉浦智彦