こんな方におすすめ
- 事業承継の対策をしようとは思うが気が進まない
- 対策をしないとどうなるか知りたい
- 先代経営者の引継ぎを促したい
事業承継で失敗した事例1(デフォルメをしております)
後継者が高齢の先代経営者から事業承継を受けている中ガンになり廃業を余儀なくされた事例
<登場人物>
先代経営者(母):死亡したご主人に代わって、長年会社を安定的に経営してきた。従業員も数名いるが経営は全て一人で担当していた。会社自体は多数の不動産資産、在庫があり、不景気な時期であっても黒字経営を続けていた。子供は、別の種類の自営業をしている長男、仕事を手伝ってくれている長女、離れて暮らす次女がいる。
後継候補者(長女):結婚後は海外に住んでいたが、数年前、生まれ育った日本に戻ってくることを決意し、母のために会社の事業を手伝っていた。
これまでの経緯
先代経営者は、80歳を超え、さすがにそろそろ後継者を見つけなければならないというタイミングに入ってきた。
そこで、会社を手伝ってくれている長女に会社を引き継がせたいと考え、後継候補者となる長女に会社を引き継がせようと考えた。
長女は、先代経営者の意思を受け継ぎ、会社を引き継ぐ決心をし、少しずつ株式を貰い受けていた。
その一方で、この事業承継のことを、専門家だけでなく、従業員やほかの家族も何も相談していなかった。
問題の発生:従業員との対立、取引先の離脱
先代経営者は、従業員や取引先に対して、長女が後継者になったことを一言告げただけで、経営の引継ぎ作業を特に行わなかった。
そのことも影響し、長女は、経営のことがよく分からない中で、右往左往しながら、日々の経営を行っていた。
その状況を見て、頼りなく感じた従業員は、段々と後継者である長女の指示に従わなくなってきた。
また、これまで継続的に取引を続けてくれていた取引先も、少しずつ取引数を減少させていき、会社によっては契約を解消するところも出てきた。
それが、長女にとって、大きなストレスとなっていった。
長女のガンの発覚
日々業務をしていたところ、長女は突然、お腹に痛みを感じはじめていた。
しかしながら、長女は、ストレスのせいだと思い、その痛みに耐えて仕事をしていた。
そうしたところ、突然長女は職場で倒れ、病院に搬送されたところ、末期のガンが見つかった。
そのとき、先代経営者は高齢のせいで、判断能力が相当薄れている状況であった。
結果
先代経営者は既に経営権を取り戻しても経営できる状況でなく、さらに従業員や取引先は離れてしまっている中で、ほかの家族や従業員も会社を引き継げる状況になかった。
その結果、廃業に向けてという前提で、長男が会社を暫定的に引継ぎ、現在廃業に向けて在庫や不動産の処理などを行っている状況である。
どうするのがよかったか
本件は、引継ぎ当時は優良な企業の事業承継でしたが、次の3つの点が良くなかったといえます。
・事業承継の相談を誰にもしなかった
・経営の引継ぎ作業を怠った
・後継計画の「次善の策」を考える余裕がないほど先代経営者が高齢化していた
さらに、仮に長女が病気にならなかったとしても、会社の株式の価値は相当高かったと考えられ、他の親族の争族問題などの問題になることも予想されます。
もう少し早いタイミングで事業承継の専門家が相談対応できていれば、円滑な事業の引継ぎができたものと考えられます。
その点では、とても残念な案件だったといえます。