事業承継のときに、株主と連絡が取れないことがある
事業承継時、株主(死んでいることもあるのですが・・・)と連絡が取れず、株式の状況がわからないことがあります。
そんなときに、使えるのが、「所在不明株主の株式の競売・売却制度」です。
要件は案外厳しい
ただ、「数年連絡がとれていないんだよ」という事情だけでは、この制度は使えません。
この制度を使うために、2つの要件が必要になります。
要件1 通知または催告が「5年以上」継続して届かないこと
この事実を明らかにするために、単に、代表者の発言があるだけでは足りません。
「5年以上継続して到達していないことがわかるだけの」株主総会招集通知書及び返戻封筒が必要とされています。
東京地裁のホームページには、5年間で良いとの記載がなされているところですが、
ただ、実際には、満5年、つまり6事業年度分の株主総会招集通知所と返戻封筒と理解されているところもあるようです(少なくとも、大阪地裁の運用が記載された『実務ガイド 新・会社非訟』(きんざい)の初版段階では、6事業年度と記載されています。)。
要件2 その株主が,継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったこと
この事実を明らかにするために、「継続して5年間受領していないことを示す、剰余金配当送金通知書及び返戻封筒」が必要とされています。
ここも、5年でよいといえる説もありますが、6年分用意することが必要なところもあるようです。
ただ、要件1に比べ、立証は緩やかであり、この返戻封筒など以外にも、元帳などの帳簿で立証することも可能だと言われています。
いずれにせよ面倒で、あらかじめの準備が大切
上記のように、連絡がとれない株主に対しても、適切な手続きをとらないと、株式を取り上げることができません。
弁護士のサポートを受けた上で、対応していただければと思います。
弁護士 杉浦智彦