会社法

取締役をやめさせるとき、取締役に取締役会の招集通知は送らなければならない

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取締役の解任決議は、当該取締役にとっては特別利害関係がある

取締役の解任決議は、取締役にとって、特別利害関係があるとされ、解任決議の際には排除されます。

ただ、だからといって、その取締役会の招集通知を送らず、クーデターを起こすことはできません。

東京地判平成29年4月13日

これは、ロッテの創業者である代表取締役重光武雄氏(94)を代表権のない取締役名誉会長に任命する旨の決議が無効であることを争った訴訟の判決です。(その後控訴されましたが、控訴棄却されました)

創業者に対する取締役会の招集通知は取締役会の前日の深夜にメールで送られており、その結果、創業者は出席できず、発言の機会は得られないまま代表から解任されたということで、取締役会決議の無効確認がされたのです。

この裁判例では、招集通知が了知可能な状況にないこと、及びメール送信から開会までの時間が短すぎることから、招集通知がされたといえないと評価されています。

了知可能でないことについては、次の事実が評価されています。

・創業者自らパソコンを操作することがないこと

・これまで、当該メールアドレスにメールが送られたことがないこと

・秘書室でも当該メールアドレスを確認していないこと

・上記の状況が、送信時までに変化していないこと

その結果、「招集通知が送信されることを予期し得たというべき事情はうかがわれない」とされ、了知可能でないと評価されたのです。

ただ、この事例は、最終的には、取締役会決議が無効とまでは評価していません。

他の取締役の意見が強固なものとなっていることが評価され、(さらに、特別利害関係者であることも評価されてか)参加しても決議の結果に影響がなかったとして、決議自体は有効と判断しました。

どうすることが望ましいか

とりわけ、代表権を譲り渡す場合は、高齢になっていることも多いため、招集通知については、直接連絡して書類を渡すか、郵便であらかじめ送っておくということが望ましいといえます。

ただ、仮に紛争になることを前提とするならば、他の取締役の意見を固めておき、その意見の根拠となるような事情(ロッテの案件では、社内手続きなく勝手な人事をしたこと)を集めたうえで、乗り切ることも検討できるのではないでしょうか。

弁護士 杉浦智彦

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