新たなビジネスをするため、既存の業務を承継する人がいる
今問題となっている事業承継は、主には高齢による引退が想定されています。
ただ、それだけではなく、起業家が他の人にビジネスを売却するようなこともあります。
基本的には、売主側がM&A契約で注意することは少なく、対価などが中心となります。
ただ、売主がビジネスを続ける場合、競業避止義務に注意しなければなりません。
事業譲渡の売主は法律上、競業避止義務を負う
会社法で、事業譲渡の売主は、原則として、同一市町村と隣接市町村で20年間、同一のビジネスをすることができなくなっています。
これを回避するためには、M&A契約において、明確に、競業避止義務を負わないことを定めておかなければなりません。
具体的には、つぎのような条項です。
第★条(競業避止義務)
売主は、会社法その他の法令の規定にかかわらず、対象会社に対し、いかなる競業避止義務も負わないものとする。
この定めがないと、たとえば、コンサル業務をしようとしている人が、譲渡しようとしている会社の事業でもコンサル業務をしていたら、M&Aをした結果、自己の市場でコンサル業務ができなくなることも想定できるわけです。
案外、売主側のM&A契約でも、注意すべき点はあるという事例のご紹介でした。
弁護士 杉浦智彦