後継者を探すとき、通常の人の調達と同じく、ヘッドハンティングすることは少ないと言われています。
それはなぜなのでしょうか。
まずは、ヘッドハントとM&Aを、大まかに比較してみましょう。
中小企業経営者のヘッドハント | 中小企業のM&A | |
引継ぎのスピード感 | 早い(選任のみ) | 遅い(株式の収集やデューデリジェンスなども必要) |
株主構成 | 変化なし | 変化する(後継者側に引き継がせる) |
先代経営者のコントロール | 及びやすい(議決権が先代側にあるのでコントロール可能) | 及びにくい |
市場 | ある程度広がっている(エグゼクティブ市場) | 広がりきっていない |
後継者の離脱 | 容易(辞任のみ) | 困難(株式の売却等も必要) |
意思決定 | 経営者と株主の意見が異なる場合は困難 | 経営者と株主が一致することが多いので容易 |
引き継ぎ後の株式の処理 | 困難(先代経営者の相続人の紛争に巻き込まれるおそれ) | 考えることは少ない(株式の大部分を取得しているため) |
ざっとイメージすると、スピード感では、ヘッドハンティングのほうに軍配が上がります。
ただ、ヘッドハンティングの最大の難点は、株式の引継ぎを行っていないため、株主の意見と経営者の意見が分かれたとき、意思決定ができなくなるのです。
現在の株主が先代経営者だけであっても、この問題は起こります。
なぜなら、先代経営者が亡くなったあとは、誰かが相続をするわけです。
その相続によって、複数人に株式が分割されてしまうことも考えられます。
中小企業だと、全員とコンセンサスを取ることは難しいことも多いですし、何より大企業との差である経営判断のスピード感が大幅に低下してしまうことになりかねません。
その点では、ヘッドハンティングよりもM&Aを選ぶほうが、最終的には合理的だといえるのです。
しかしながら、はじめからM&Aを選択する必要はないのです。
後継者候補をヘッドハンティングすること自体は、合理的な手段といえます。
その人が経営をやっていけると確信できたとき、M&Aに速やかに移行できるようにしておけばよいのです。
M&Aは、弁護士の関与が不可欠です。
まずは、後継者選びのことも含め、弁護士にご相談ください。
弁護士 杉浦智彦