遺留分制度とは?
遺留分制度とは、ざっくりいうと、「亡くなった方の配偶者や子(いなければ親)に、最低限相続させないといけないですよ」という制度です。
案件にもよりますが、相続財産全体の半分~3分の1が遺留分として確保されることになります。
ある相続人だけ、過剰に相続財産の指定をしたり、遺贈したりしたときに、「これはやりすぎだ」として、遺留分減殺請求というものができるのです。
これまでの遺留分制度は原則として財産の共有
これまでの遺留分制度では、遺留分は、「それぞれの財産」ごとに、共有するという形で発生をしていました。
たとえば、Aさんは、妻であるBさんと、子であるCさんとDさんがいたとしましょう。
経営者であるAさんには、1000万円分の価値のある株式、1000万円の価値の自宅不動産と、預金500万円があったのですが、亡くなってしまいました。
Aさんは遺言で、「相続財産はすべて妻であるBに相続させる」と書いていました。
この場合、CさんとDさんは、本来ならば、少しはもらえる相続財産がもらえないので、遺留分減殺請求を使えるわけです。
計算は、Bさん、Cさん、Dさんの本来の相続割合が2:1:1ですので、遺留分割合である2分の1をかけて、CさんとDさんはそれぞれ8分の1の財産を得られるわけです。
具体的には、株式については8分の1、不動産の8分の1、預金については625,000円分が、CさんとDさんのものになるのです。
ただ、これだと、それぞれの財産で、「持ち分」という形になり、処分が難しくなってしまうわけです。
そこで、法改正がなされたわけです。
改正により、遺留分は金銭処理だけに
新しい相続法では、遺留分減殺請求という形ではなく、「遺留分侵害額の請求」(改正後の民法1046条)となりました。
これは、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求するものなのです。
Aさんの事例であれば、相続財産の合計額である2500万円の8分の1ずつである、312万5000円を支払えとBさんに請求できるわけです。
これにより、不動産や株式は、完全にBさんのものになりますので、その点では、めでたしめでたしです。
本当によい?キャッシュ不足になるかも?
ただ、これには、デメリットもあるわけです。
経営者がなくなり、何かと物入りの時期に、他の人から合計600万円以上を請求されるわけです。
預金が500万円しかないにもかかわらずです。
もし、会社経営がうまくいかないとき、Bさんは、現金もなく、場合によっては自宅を売却しなければならないようなことも考えられるわけです。
こうならないためにも、遺留分は確認しておく必要
キャッシュのトラブルが発生しないようにするためにも、弁護士に相談し、遺留分の確認をしておくことが大切です。
また、遺留分は、事前に放棄をしてもらったりして、あらかじめ対処する方法もございます。
まずは弁護士にご相談ください。
弁護士 杉浦智彦