労務

合併後の労働条件の統一をするためにどんな手続きが必要?

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合併のあと、就業規則を統一していくのが通常

第三者承継をし、合併や事業譲渡をした場合、その引受会社は就業規則を統一していく必要があります。そうしないと、労務管理上好ましくないからです。

その点について、最高裁も大曲市農協事件(最判昭和63・2・16民集42-2-60)で、「一般に、従業員の労働条件が異なる複数の農協、会社等が合併した場合に、労働条件の統一的画一的処理の要請から、旧組織から引き継いだ従業員相互間の格差を是正し、単一の就業規則を作成、適用しなければならない必要性が高いことはいうまでもない」とコメントしているところです。

合併で自動的に労働条件が統一されないの?

合併しても、実は、労働契約の変更について、なにかしらの手当がなされているわけではありません。

従前の内容のまま、労働契約は引き継がれることになります。

就業規則を変更するには、通常と同じく、労働契約法10条が定める一定の要件を充足した上で、変更していく必要があるのです。

労働契約法10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに、労働者に周知するほか、

  1. 労働者が受ける不利益の程度
  2. 変更の必要性
  3. 変更後の内容の相当性
  4. 労働組合等の交渉状況
  5. その他の事情

などに照らして、合理的といえないといけません。

判断としては、とてもむずかしいため、通常は弁護士のアドバイスが必要となります。

 

なお、事業譲渡だとどうなるの?

実は、事業譲渡だと、使用者たる地位の承継をしない場合を除き、労働契約は、一旦解消した上で、同時に個別に承継先と労働者が労働契約を合意していくことになります(再雇用型)。

そのため、労働条件の統一という意味では、事業譲渡のほうが簡単だったりします。

 

弁護士 杉浦智彦

 

 

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